国土交通省や環境省は19日、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を設置する。今夏をめどに規制強化の内容や義務化する時期を含めた工程表をまとめる。今月1日に全面施行された改正建築物省エネ法では、中規模以上の新築オフィスビルや商業施設は現行の省エネ基準の適合が義務化された。政府はこの対象に住宅を加える形で再度の法改正も視野に入れる。
具体的には、外壁に効果の大きい断熱材を使用することや、遮熱性の高い窓、高効率な空調設備の設置などが義務化される方向だ。冷暖房用の電力や灯油の使用量削減につながる効果が期待できる。海外に比べて「時代遅れ」(ハウスメーカー)との指摘がある省エネ基準自体の強化を議論する可能性もある。
2019年度に国内で排出された二酸化炭素約12億トンのうち、冷暖房用などを含めた住宅分野は15%程度を占める。住宅の脱炭素化は遅れが目立ち、全国の約5000万戸で現行の省エネ基準に適合しているのは18年時点でわずか11%だ。ただ、既存の住宅に断熱の資材や設備への交換を強いることは難しいため、年間90万戸前後となる新築住宅に限って義務化の対象にする。省エネ基準を満たす新築住宅は69%(18年度)で、政府は早期に100%に引き上げることを目指す。
国交省によると、小規模の新築住宅の場合、省エネ基準に適合する資材や設備を導入することに伴う追加コストは87万円と試算され、建設費用全体の4%に相当する。省エネ効果で光熱費が年間2・5万円節約できるものの、回収するには35年かかる計算だ。
この追加コストは、基本的には販売価格に転嫁される形になる。ただ、住宅業界は価格競争が激しく、住宅メーカーや工務店が一定程度の負担を強いられそうだ。神戸市の工務店経営者は「値上がりを顧客が受け入れてくれるか心配。客が離れ廃業につながりかねない」と懸念する。
さらに施工面での不安も残る。国交省などが18年度に中小の工務店や建築士を対象に行ったアンケート調査では、省エネ住宅の設計に必要な数値計算ができるとの回答は5割にとどまった。省内では「(規制強化は)市場への影響が大きい」(国交省)との声が出る。戸建て住宅の4割程度は、地場の中小工務店や大工が建設を担うとされ、省エネ基準への適合義務化がこうした業者の経営悪化や淘汰(とうた)につながる可能性がある。