※「老後資金2,000万円問題」をはじめ、将来の生活への不安が増すなか、投資による資産形成を促す声が高まっています。
貯金だけでは食っていけない時代になった……ともいえますが、つみたてNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)に過度な期待をしすぎるのも、考えものですよね。
→ 令和2年12月に厚生労働省年金局が発表した『令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』では、以下の事実が報告されています。
●厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、令和元年度末現在で、老齢年金は14万6000円となっている
●国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、令和元年度末現在で5万6000円、令和元年度新規裁定者で5万4000円となっている
※年金受給額の減少…「自助努力」の裏に隠された真実
月14万円。サラリーマン時代を思うと、なんとも心細い数字ではないでしょうか。さらに同調査では、受給者が毎年増加していくなか、厚生年金受給額はこの5年間で1500円以上減少していることが示されています。
■年金で足りるか?支出額を調べると… 総務省『家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)2 総世帯及び単身世帯の家計収支』では二人以上の世帯および単身世帯の家計収支の状況について詳細が記されています。
高齢無職世帯のうち「夫65歳以上・妻60歳以上の二人世帯」について見ていくと、実収入は「237659円」、消費支出は「239947円」となっています。
実収入の91.3%は社会保障給付。そして日々の不足分は「33269円」。
また世代別に高齢無職世帯(二人以上)の家計収支を詳しく見ていくと、
60~64歳世帯の生活資金の不足額※は「117184円」、60~64歳世帯の不足額「48686円」、70~74歳世帯の不足額「41004円」、75歳以上世帯の不足額「14180円」となっています。
※同調査では「黒字 -32979」といった表し方をしているが、便宜上「不足額」とした
※「自助努力」は本当に可能なのか?
「年金」制度は現役世代が受給世代を支える賦課方式ですが、すでに「支えきれていない」ことは明らか。
見かねた政府は「つみたてNISA」「個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)」をはじめ、投資による自助努力を促しています。
初心者にもわかりやすく描かれた「お金が増える仕組み」を目の当たりにし、投資を始めれば安心なのか!と考える方もいますが、100万円がいきなり200万円になる……といった話でもありません。
つみたてNISAの場合、金融庁の指導のもと、選ばれた投資信託のみで運用されます。
ざっと(極めて概算ですが)年利は1~5%といったものでしょう。
5%でも、チャレンジングな投資をしているほうです。
100万円が1年で102万円になった、105万円になった……という地道な投資なのです。
とくにiDeCoの場合、原則60歳まで引き出すことはできません。
病気しかり、事故しかり、人生いつ何が起きるかわからないもの。
十分な貯金がない場合は、一考の余地ありといえるのではないでしょうか。