■②年金が少ない人の老後の生活費はどうすればいい?

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年金が少ない人の老後の生活費はどうすればいい?

自営・自由業だから、非正規や派遣社員だから、会社員期間が短くて、年金保険料の納付期間が短くて、熟年離婚して…などで年金額が少ない人がけっこういます。

40代~50代の人のなかにも、将来、低年金予備軍がいそうです。まずは、ねんきん定期便やねんきんネットで、将来もらえる年金額を把握しておきましょう。

年金が少なくても、一定年齢までに老後資金の貯蓄ができればいいですが、おそらく、低年金になってしまう人のなかには貯蓄をしたくてもできない人もいるでしょう。

そんな人は、定年退職や再雇用が終了してもずっと働く覚悟が必要です。生活費を稼ぐのは当然ですが、少しでも貯蓄を増やしたいからです。

※年金を繰り下げて年金収入を増やす

そして、65歳から受け取れる年金を繰り下げてください。

最長75歳まで繰り下げられます。65歳から1ヵ月遅らせるごとに年金月額が0.7%支給額は増える仕組みで、70歳まで繰り上げれば42%増、75歳なら84%増となります。

もちろん、この割増は死ぬまで続くので、大きいですよ。何歳まで繰り下げるかは、本人の収入や試算状況、健康状態など、いくつかの要因で決まってきますが、少しでも繰り下げて、より年金収入を増やすことを考えることも必要です。

 

※繰り上げ受給、繰り下げ受給は得なの?損なの?

「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」それぞれの制度を選んだ場合の受給額を65歳からの通常受給と比べて考えてみましょう。

 
①下の図は「繰り上げ受給」を選んだ場合と65歳受給した場合の受け取り総額と比較したものです。

例えば60歳受給開始を選んだ場合で考えると、毎年の受け取り額は本来受給額の70%相当。

 
それを毎年累積していくと76歳満了時点で本来の65歳受給より受け取り総額が少なくなるのが分かります。

同じように61歳受給開始の場合は77歳、62歳受給開始の場合は78歳、63歳受給開始の場合は79歳、64歳受給開始の場合は80歳とそれぞれの年齢を満了した時点で

 
本来の65歳受給より受け取り総額が少なくなるのがお分かりかと思います(図内の黄色い枠)。逆に言うとその年齢までは繰り上げ受給しておいた方が受け取り総額は多いわけです。
 
繰り上げ,年間受給額,累計受給額
 
②次に「繰り下げ受給」を選んだ場合はどうでしょうか。「繰り下げ受給」を選んだ場合と本来の65歳受給の場合の受け取り総額を比較したものが下の図です。
 
仮に66歳からの繰り下げ受給を選んだ場合だと77歳満了時点で繰り下げ受け取り総額が本来の65歳受給総額を上回り、その後は受け取り総額が増えていくことが分かります。

同じように67歳受給開始の場合は78歳、68歳受給開始の場合は79歳、69歳受給開始の場合は80歳、70歳受給開始の場合は81歳とそれぞれの年齢を満了した時点で

 
本来の65歳受給より受け取り総額が多くなることが分かります(図内の黄色い枠)
 
繰り下げ,年間受給額,累計受給額

繰り上げ受給を選ぶ際の注意点

・老齢基礎年金、老齢厚生年金の両方同時に繰り上げなければならない
・国民年金に任意加入中の方は選択できない(年金額を増やす目的で入っている人のことです)
・繰り上げ受給中に障害者となっても障害年金はもらえない
・繰り上げ受給すると寡婦年金がもらえない(国民年金保険料を10年以上払った夫と10年以上結婚している65歳未満の妻は、夫が死亡した場合、本来夫が受け取るはずの年金額の3/4がもらえ、これを寡婦年金といいます)
・繰り上げ受給した場合、65歳になるまで遺族厚生年金を併給できない(繰り上げ受給中に配偶者が亡くなった場合、65歳になるまでは「繰り上げ受給している年金」か「遺族厚生年金」どちらかを選択しなければならないという意味です。65歳以降は併給可能です)
 

繰り下げ受給を選ぶ際の注意点

・老齢基礎年金、老齢厚生年金はどちらか一方を繰り下げることが可能

・繰り下げの選択は66歳以降(65歳中はできません)
・65歳~66歳になる間に他の年金の受給権が発生した場合は繰り下げができない
・66歳以降に他の年金の受給権が発生した場合はその時点で増額率が固定される
・加給年金は増額されず、待機期間は支給されない(厚生年金に20年以上入っている方が年金を受け取る場合、配偶者が65歳になるまで加算される家族手当のようなものです。条件あり)
・在職中の方は、在職老齢年金調整後の額が増額の対象(65歳から70歳の間、働いている場合、年金の一部または全額が支給停止となる場合があり、在職老齢年金といいます)
 

繰り上げ、繰り下げの選択は総合的に判断すべき

早くからもらえるから「繰り上げ受給」を、年金額が増えるから「繰り下げ受給」をと安直に選んでしまうのはあまりおすすめしません。なぜなら前項で述べたように、受給金額以外にも繰り上げ、繰り下げを選ぶことで通常なら受けられたはずの制度が制約を受けてしまうことも多いためです。

繰り上げ受給、繰り下げ受給を選ぶ際には、ご自身の状況も踏まえたうえで総合的に判断する必要があるかと思います。