21年はコロナ禍からの景気回復への道筋が見えたが、新たな変異株、オミクロン株の出現で22年も感染症の脅威から完全には逃れられない年になりそうだ。
コロナ不安は移動や外出、営業の制限が繰り返されることによる景気の減速や、供給制約と労働逼迫による物価・賃金上昇圧力、ゼロ・コロナ政策に固執する中国の成長ペース鈍化といったリスクを世界中にまき散らすだろう。
金融市場では来年の経済や株価に対する楽観的な見方も散見されるが、米国FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策の修正ペースが想定以上に加速する可能性もある。
パウエル議長やECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁がかじ取りを誤れば、インフレ抑制の失敗や景気の失速を招く、と危惧する声は決して少数ではない。最悪のケースでは、ほとんどの現役投資家が経験したことがスタグフレーションに見舞われるリスクもないとはいえない。
不透明感があふれる22年の日本経済の鍵を握るのが、「ドル円」がどう動くかだ。
2022年の米ドル円は110~120円を予測
多くの正統派エコノミストは、日本円が極めて割安なこと、経常収支黒字が続いていることから、いつかは円高方向に戻るはずと考えています。よって、2022年の予測も、目先は米国の金利上昇に合わせて、ドル高円安が若干続くかもしれませんが、いずれ割安な円に資金が戻るので、中長期的には円高リスクが上回ると考えている人が多いように見えます。
問題は、それがいつなのかですが、日本側の理由としては上述した天災のケース以外、あまり想定できません。日本での運用利回りが海外を上回るはっきりとした見通しがあるならば、資金は戻ってくるでしょうが、日本銀行の黒田東彦総裁は「金融緩和を続ける」とはっきり明言していますし、報道によると安倍晋三元首相も、現在の岸田文雄総裁にアベノミクス(=超金融緩和政策)を続けるように要請しています。つまり、日本の超金融緩和政策が変更されることは考え難いということです。
米国は今後、テーパリング(量的緩和の縮小)を加速していきます。そして2022年には3回の利上げが想定されていますが、そうなると、しだいに円安が進む展開をやはり想定せざるを得ません。
しかしながら、米国側のリスクとしては、株価の動向があります。新型コロナウイルスの発生以降、かつてないレベルの財政出動、金融緩和が行われ、それが株価を大きく押し上げましたが、その要因は今後消えます。
金融環境は引き締まるので、新興のグロース株には極めてネガティブです。「ビルド・バック・ベター」法案が今後どうなるかわかりませんが、可決されなければ、2022年のGDPを今後0.5%程押し下げると見られています。
米国株の強さは、米国の財政支出と超金融緩和だけに支えられたものではありませんが、割高であることは事実です。2022年中のどこかで20%程度下落する可能性はどこかであるかもしれません。その時は、「リスクオフ」として、ドル円を押し下げる方向に作用するでしょう。
ただ問題は、株価が下げ続けるかです。割高な部分は剥落する可能性はありますが、米IT企業の本質的な競争力の強さまで否定されるものではないと思います。下げたところで、何を買うかとなれば、やはり米国のIT企業になってしまうのではないでしょうか。よって、下げても20%程度と思います。
2022年のドル円相場は、基本的に110~120円、広くて105~125円といったレンジで、メインシナリオとしてはゆっくりと120円方向に行く展開でしょうか。米国株が下落する局面では円高に進むでしょうが、ITバブルやリーマン・ショック時のような大規模な下落は想定していません(そうなれば、シナリオはまったく別になります)。20%程度の下落なら、ドル円は下げて105円程度でしょう。
※ → あくまで専門家の予想であり、投資は自己責任でお願い致します。